あるはみ出し者(ジョーカー)達の日常verソウサク 1-2話

そのまま椅子を蹴倒さんばかりに立ち上がり、今にも部室を飛び出して行きそうな勢いの燈花を慌てて引き止める。

「待って待って燈花! 葵は今日一日、普通だったでしょっ? もう直ぐ部室にも来るだろうしさ! それまでに、もうちょっと悠の話を聞こうよ! 悠が落ち着いて話してるんだし、今直ぐの危機はないって!」

――凍川葵。
完璧主義者で合理主義者で現実主義者。
硬質の美人。
長い黒髪がとっても似合う。
賢い。
半端ない努力家。
ずば抜けて優秀。
情報収集が得意。
自分にも他人にも容赦がない。
自分が調べたものと自分の目で見たもの、自分の信頼する人が調べたものと自分の信頼する人が見たものを信じる柔軟さも持っている。
逆に言えば、それしか信用しないとも言える。
一見冷たくて、僕や悠には猛のつく毒舌だけど、本当は友達思いでとても優しい……僕のとっても大切な友達の一人。
僕が凍川葵について、簡単に思いつくイメージはこれくらいだ。
葵の思考は、呪いなんて非科学的なものからは一番遠い位置づけ、というか対極に存在してるとまで言える。
そして、双子の悠も葵と同じくらいには、その思考は徹底してる筈、なんだけど……。
どうして『葵が呪われた』なんて思ったんだろう?
呪いと疑わざるを得ない根拠が、何かあったんだろうか?
不思議だし、やっぱり半信半疑ではあるけど……他ならぬ悠が言うんだったら、それだけで聞く価値が充分にある。
悠は……勿論、葵や燈花もだけど、友達の名前を使って心配させるような、そんな悪趣味な嘘は冗談でも絶対に吐かない。
だから、悠が葵の名前を出して『呪われた』と言った以上、真剣に聞く以外の選択肢は有り得ない。
……呪いか、やっぱり呪いじゃないとしても。
葵に何かしらの危機が迫っているという事実に――変わりはないのだから。

「……柚季。うん、そうだな。じゃあ、悠。話を頼む」

燈花の促す声に、悠は小さく頷いた。

「……昨日の朝の話なんだがな。左脚の足首に、誰かに掴まれたような痣ができたと葵から相談を受けた。その痣に気付いたのは三日くらい前らしいんだが、日に日にその痣は大きく濃くなってるんだと。その痣を見せられたんだが、大男が力一杯握ったような手形が大きな痣になって残ってたんだ」

悠は僕達の反応を見るように、一度言葉を区切った。
僕も、そして燈花も真剣そのものの面持ちで話を聞いている。
呪いだろうが、呪いじゃなかろうが、重要なのは『葵が危害を受けている』その一点だけだ。
そして、虐めだろうがストーカーだろうが自力で跳ね除けてしまうような強さを持つ葵が、わざわざ悠に自分の事を相談した――それこそが、事態の深刻さを何よりも雄弁に物語っている。

「昨日の夜中は、突然、左の足首が万力のような力で握られる痛みで目が覚めたらしい。……で、やはり足首の痣は濃くなっていた。無論、ストーカーの線も考えたが……流石に家まで侵入されるのは考えられねえし、何よりあの葵だ」

「あぁ……。うん」

思わず、頷く。
今まで僕と同じように、さんざん人の悪意に触れ続けてきた葵だ。
その葵がストーカーの気配、ましてや自分に向けられたものに気付かない筈がない。

「それでっ、葵は大丈夫なのかっ? 部室に来るのが遅くないかっ!?」

燈花が心配そうに声を張り上げる。
そんな燈花を宥めるように、悠が落ち着いた声音で説明した。

「それは心配ない。非科学的だろうが、奇怪な現象が起こっている以上、何かしらの原因があるはずなんだ。原因なくして結果は起こりえない。葵は今、それを調べて遅れてるんだ。……まぁ、本当は俺達だけでカタをつけたかったんだが、途中で柚季や燈花にバレると、二人とも暴走しそうだからな……」

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