あるはみ出し者(ジョーカー)達の日常verソウサク 5-2話

「…………はっ?」

小さな驚愕が、七瀬愛梨の口を突いて漏れ出した。
焦ったように、スマホを操作していく。
繋がらない、繋がらない、繋がらない。
そうして、七瀬愛梨が焦ったような思考に囚われている……その背後では、何よりも奇怪で不可思議な「異常な状況」ができ上がっていた。
七瀬愛梨は気付かない。
背後の鏡で異常が起きていたのを。
七瀬愛梨は気付かない。
背後の、七瀬愛梨の後頭部が映った鏡の中で――鏡面世界の七瀬愛梨がゆっくりと振り返って、無機質な双眸で七瀬愛梨をじぃっ、と見ていたのを。
無機質な、いっそ硝子玉のような瞳なのに、その口だけが異常なまでに吊り上がっていた。
真っ赤な口腔内が薄く覗き、顔面の皮膚が引き裂けてしまいそうなほど唇を吊り上げた、壊れた笑顔を浮かべていた。
鏡面世界の七瀬愛梨が、二ィィと嗤う。
現実世界の七瀬愛梨は外から聞こえてくる男子二人の声を意識から外し、混乱した思考でスマホに目を落としている。
その背後でどんな異常が起きているかも知らずに。
ただ、スマホに目を落として操作する。
その様子を見て、鏡面世界の七瀬愛梨の唇が、ますます歪に吊り上がり、七瀬愛梨へと向かって両手を大きく伸ばした。
ズルリ、と――そう形容したくなるような、しかし音もなく鏡面の中から二つの白い腕が飛び出した。
ただ、鏡面には小さな波紋を打つだけで、まるでそれが当然であるかのごとく、抵抗もなく白くて細い腕が飛び出した。
しかし、七瀬愛梨は気付かない。
気付かず、ただ視線をスマホに落として操作している。
その様子を見て、鏡面世界の七瀬愛梨はますます壊れた笑みを深くして、まるで昆虫が獲物を捕食するような無機質な動作で目の前にいる七瀬愛梨へ両手を伸ばし、顔ごと覆うように唇を塞ぎ、ぐっと引き寄せた。
背後から突然掛かった激しい負荷に、七瀬愛梨は驚きに目を見開いて必死で藻掻くも、バタバタと宙に浮いた足だけが虚しく空を掻いた。
持ち上げられた七瀬愛梨と、鏡面世界からはみ出した七瀬愛梨の目が――遭う。
鏡面世界の七瀬愛梨は血走った目を限界まで見開き、唇が真っ赤にまくれ上がった、いっそ狂的なまでに歪んだ笑顔で七瀬愛梨を力任せに鏡の前まで持ち上げて、

そして――……

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