あるはみ出し者(ジョーカー)達の日常verソウサク 2-1話

そうして僕達は一度帰宅後、時が過ぎるのを待って夜中の一時四十五分に校門へと再集合していた。
見回りの警備員さんや、来ている筈の七瀬さん達が周囲にいないのを確認して、校門を素早く乗り越え、見つからぬよう校舎の壁へと張り付く。
完全下校時刻直前に予め鍵を開けておいた、今は使われていない空き教室の窓をカラリと開く。
そして持ち帰っておいた上履きに履き替え、抵抗なく開かれた窓から空き教室へ侵入する。
警備員さんが巡回してないかを、五感を鋭敏に研ぎ澄ませて、今居る本校舎の一階から三階まで上がり、渡り廊下を抜けて北校舎へ移動する。
そして、葵を先頭に北校舎の三階から二階へ下りて……僕と燈花が一年生の時に通っていた教室の前へと辿りついた。
電灯は一切点いておらず、しかし薄ぼんやりとした橙色の明かりが、ほんの小さく漏れてくる。
そして、暗くこもった陰鬱な声音で呪詛の文句が「サカキさん、サカキさん。貴方の望んだ左腕はここに」と、小さく漏れ聞こえてきた。
僕は今にも沸騰しそうな激情をどうにか堪える。
背後を振り返り「突入していい?」と、葵達に目配せした。
葵は「私の名前が出るまで待ちなさい」と唇だけで言葉をなぞり、小型のハンディビデオを起動して、廊下と教室に繋がる連窓越しにレンズを向けていた。
僕は己の内で黒く煮え滾る感情と葛藤しながら、辛抱強くその時を待った。
…………やがて。

「その者の名は『凍川葵』です。今から書き添えます。サカキさん、サカキさん、お受け取り下さい。そして、その者の左脚を奪い、命を贄としてください」

女子特有の高く、そしてよく通るソプラノボイスで、葵の名前が宣言されるのを聞いた瞬間――僕はもう我慢できず、足が勝手に動いていた。
右手に持ったペン型の懐中電灯を点灯させ、ガラリと教室の扉を開けるッ。

「そこまでだよっ!」

――真っ先に目に飛び込んできた光景……それは異様なものだった。
机の四隅に置かれた四本のロウソクだけが橙色の灯火となって、四人の男女と教室を薄ぼんやり照らしている。
ばっ、と目を見開いた四つの驚愕の形相が、僕のかざしたライトの上に浮かび上がった。
ライトを少しだけ、下に落とす。
四人の手が絡まるように、まるで四つの手が一つの生き物のように指が犇めき合い、一本の万年筆を握っていた。
その下には事前の情報通り、コックリさんに使われるような五十音の書かれた紙と……そして怪しげな魔法陣。
それを見て、何故だか解らないけど……本当にどうしてだか解らないけれど悪寒が走り、体中の産毛が、ぞぉっと総毛立った。
普段から通い、もうとっくに見慣れた筈の学校の教室という風景。
……だというのに。
全く見知らぬ異界にでも迷い込んでしまったかのような、そんな激しい違和感に苛まれた。
昼と夜が違うだけで、見慣れた風景でもこんなに変わってしまうのかな? と、疑問に思ったその時、江藤君が甲高い声で恫喝するように叫んだ。

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